遺言
遺言を作成するメリット・デメリット
1 遺言は基本的に作成した方が良い
遺言の作成には、メリットとデメリットがあります。
しかし、遺言を作成するデメリットよりも、遺言を作成するメリットのほうが大きいため、基本的には遺言は作成しておいたほうが良いと言えます。
以下では、遺言を作成するメリットとデメリットについて、代表的なものをご説明します。
2 遺言を作成するメリット
遺言を作成するメリットとしては、以下のものがあげられます。
⑴ 相続人間の紛争を予防できる
まず、遺言を作成する代表的なメリットとしては、相続人間の紛争を予防できるという点です。
遺言がない場合、相続人全員による遺産の分け方の話し合い(遺産分割)が必要となります。
相続人間の中が悪い場合や疎遠な場合は、円滑な遺産分割協議ができず、遺産を分割するために、家庭裁判所での遺産分割調停・審判が必要になる場合があります。
⑵ 相続人以外にも遺産を渡すことができる
遺言を作成すれば、相続人以外の人や法人に対しても、遺産を渡すことができます。
そのため、今までお世話になった知人や慈善団体に寄付することも可能です。
⑶ 迅速に相続手続きをすすめることができる
相続税の申告が必要な場合、10ヶ月以内に遺産の分け方を決め、申告する必要があります。
遺言があれば、遺産の分け方が決まっているため、基本的に申告期限内に申告することが可能となります。
また、遺言があれば、遺言がない場合に比べて相続手続きの必要書類が少ないため、手続の負担も軽減され、遺産分割協議書を作成するよりも迅速に手続きを行うことができます。
3 遺言を作成するデメリット
他方、遺言を作成するデメリットとしては、以下のものがあげられます。
⑴ 手書きの遺言(自筆証書遺言)の場合、作成の要件が厳しく、無効になりやすい
自筆証書遺言には厳格な作成要件があり、これを一つでも間違えてしまうと、遺言としての効力が認められなくなる場合があります。
たとえば、遺言には、作成日を記載する必要がありますが、これを「令和6年1月吉日」などのように、具体的に日付が特定できない記載ですと、遺言としての効力を有さない可能性があります。
⑵ 遺言の作成に法律だけでなく税関係の知識が必要となる
遺言を作成するためには、遺言が有効となる法律の要件に関する知識だけでなく、税金の知識も必要になる場合があります。
たとえば、小規模宅地等の特例という制度がありますが、これは誰が土地を相続するかによって適用の有無が異なります。
そのため、遺言を作成する場合は、税金に関する知識も必要となります。
これらの知識なく遺言を作成してしまうと、多額の税金を納めることになる可能性もあります。
⑶ 費用がかかる場合がある
自筆証書遺言の場合は、紙とペンがあれば作成することができますが、公証役場で作成する遺言(公正証書遺言)では、公証人に支払う手数料が必要となります。
また、専門家に遺言の作成を依頼した場合、専門家に支払う手数料も発生します。
もっとも、遺言がない場合で、かつ、相続人間でもめてしまった場合、基本的に遺言の作成よりも高い費用、場合によっては数十倍の費用を要することもありますので、費用面については、それほど大きなデメリットではありません。
4 遺言の作成は弁護士にご依頼ください
このように、遺言の作成にはメリット、デメリットがありますが、デメリットに関しては、費用面を除いて、専門家に依頼することでカバーすることが可能となります。
そこで、遺言の作成については、専門家選びが非常に重要になります。
なぜなら、専門家ごとによって、有している知識や経験、依頼にかかる費用がことなるからです。
なお、専門家の中には、相続に詳しくない方もおり、費用だけで専門家を選ぶと「安かろう悪かろう」という事態になる可能性がありますので、注意が必要です。
そのため、内容をしっかりと検討した上で、ご希望に適った遺言を作成したい場合は弁護士に、中でも税理士の資格を有した弁護士に相談されることをおすすめします。